第1回市民公開講座「わかりやすい関節リウマチの診療」では多くのご質問をいただきました。そのうちの2つの質問にご回答いたします。

 

質問1  抗リウマチ薬の次に生物学的製剤というより直接に抗サイトカイン療法を使う事はできないのですか?トシリズマブ製剤と併用療法はできないのですか?

 

 確かに生物学的製剤(抗サイトカイン療法)を関節リウマチの方にすぐ使うという考え方はあると思います。しかし関節リウマチの患者さんの重症度がいろいろであることを考慮すると、「いきなりすべてのひとに生物学的製剤を使用するのが、はたして正しいのか?」とよく検討する必要もあります。日本リウマチ学会のガイドライン(TNF阻害療法施行ガイドライン)では、すでにこれまでよく使用されている抗リウマチ剤(注1)の通常量を3カ月以上継続して使用しても、なかなかリウマチをコントロールできない患者に使用することになっています。したがってやはり抗リウマチ剤をまず使用して、不十分であれば、生物学的製剤などの次の一手を考えることになるでしょう。

(注1) ここでいう抗リウマチ剤とは、メソトレキセート(リウマトレックス、メトレートなど)、サラゾスルファピリジン(アザルフィジン)、ブシラミン(リマチル)、レフルノミド(アラバ)、タクロリムス(プログラフ)など推奨度Aの抗リウマチ薬を指します。
 トシリズマブ(アクテムラ)とレミケード、エンブレルなどのTNF阻害剤は併用することはありません。アクテムラでIL6を抑え、レミケード、エンブレルでTNFを抑えるということは、生体でも重要な働きをしているふたつのサイトカインを一度に抑えてしまうことになり、やはり感染症などの副作用が、より心配ということになります。

 

質問2  次々に新薬ができるけれども誰にでも働くのか。他の持病がある場合はだめなのか。

 

 新薬ができたときは2つのことに気をつける必要があります。適切な使用法の範囲で使用することと、新たな副作用もありうることを念頭に置くことです。日本リウマチ学会では新しい生物学的製剤に対するガイドラインを公表して、どのように使用するのがよいかの、おおまかなアウトラインを示しています。まずこれまでの抗リウマチ剤の治療で、少なくとも3ヶ月間治療をして、効果が不十分であった方が対象となります。生物学的製剤を追加治療するときは、TNF阻害剤(レミケード、エンブレル、ヒュミラ)がまず使用されることが多いですが、それぞれに一長一短があります。だれにでもすぐ効くというものではありません。関節リウマチという病気の活動性が、それぞれの患者さんで異なりますので、それを考慮して薬剤を選択したり、量を加減したりする必要があります。ひとつの生物学的製剤で良くならないときでも、別の生物学的製剤で良くなることもあります。医師はガイドラインを参考に、できるだけ適切に使用するように工夫しますし、新しい薬ですので、使用患者の全例調査が行われ、どのような副作用があるのか、どのような方に副作用がおこりやすいのかが、集計されています。
 患者さんが生物学的製剤を希望されても、活動性結核があったり、B型肝炎ウイルス感染症があったり、重度の心不全があったりすると、使用できないと言われると思います。いずれにしても、生物学的製剤を使用できるかどうかを、主治医とよく相談する必要があります。