3)ステロイド性骨粗しょう症とその治療


NTT西日本大阪病院リウマチ・膠原病センター 

センター長 前田 恵治(まえだ けいじ)

 

 ステロイドとは副腎皮質ステロイドとも呼ばれ、腎臓の上にある副腎というところから出るホルモンです。ホルモンですので、ほんのわずかの量で、いろいろの働きをして、われわれの体をささえています。このホルモンは強い抗炎症作用があるため、お薬として使われていて、現代の医療にはなくてはならない重要なものです。しばしば膠原病治療の特効薬として使われますし、喘息発作やリウマチ治療にも、大きな役割を果たすだけでなく、ほかの多数の病気に日常的に使用されています。
 

 そのようなすばらしい効果がある一方で、副作用にも気をつける必要があり、そのひとつが本日のテーマの骨粗しょう症です。実際に骨が弱くなって、骨折をおこしやすいかどうかは、骨密度が多いか少ないかがひとつの指標になります。ステロイドによる骨粗しょう症で大切な点は、たとえ骨密度が高くても、ステロイド性骨粗しょう症の場合は、骨折が起こりやすいという点です。
 

 日本骨代謝学会では平成16年に「ステロイド性骨粗しょう症の管理と治療のガイドライン」を出して、骨粗しょう症の予防を含めた治療の方向性を決めています。それによると、骨密度の低下がそれほど強くなくても、ステロイド服用(プレドニンで5mg以上、3ヶ月以上投薬予定の場合)する方には、骨粗しょう症の一般的指導に加えて、骨粗しょう症のお薬を予防として内服することになっています。まずビスホスホネート製剤が推奨されており、次にビタミンD、ビタミンKなどが勧められています。
 

 このビスホスホネートというお薬は、服薬しなかった方と比べ、明らかに背骨が骨折する頻度を下げることが実証されている有用なお薬ですが、最近、顎骨壊死など、歯科治療に関する副作用も、頻度は少ないものの、言われるようになりました。
 

 本日はステロイド使用に伴う骨粗しょう症がどのようなもので、どうすれば骨粗しょう症が進行して、骨折してしまうことを防げるかについて説明します。


講師紹介
大阪大学医学部卒業。同大学医学部大学院卒。米国MIT癌センター研究員を経て、NTT西日本大阪病院内科勤務。現在、同病院アレルギー・リウマチ・膠原病内科部長兼内科部長、リウマチ・膠原病センター センター長、大阪大学医学部呼吸器・免疫アレルギー内科学臨床教授(併任)。